手あてを大切にしている理由

セラピストとして開業して約5年が経過した時、私の人生において大きな出来事が起こりました。有り難いことに口コミで沢山のお客様に恵まれました。朝から夜遅くまでサロンで働いてました。それが、自分のやりたかった事だと思っていましたし、やりがいもあり、目の前で喜んでくれるお客様がいてくれて働けることがとても幸せでした。ある出来事が起こるまでは…。

仕事が忙しくなり、自宅から車で10分ほどの実家にも、行くことも少なくなっていました。
そんな2017年のある日、父から一通のLINEが届きました。母が胃癌と診断されたこと。さらに肝臓とリンパに転移していて、もって一年だと告知をされたと。。。母も癌だとは告知されたが、余命を告げられた事は伏せてると。。。

仕事中に見たそのLINEの内容に血の気が引いていったのを今でも鮮明に覚えています。これは、現実なのか?夢じゃないのか??地に足がつかないとは、このことなのかと思うほど、現実を受け入れれないでいました。

仕事終えて急いで実家に行き様子を見ると、母は椅子にちょこんと座りしょんぼりしている。。。そりゃそうだ…。まさか自分が癌になるなんて誰も思わない。しかし、私までここで一緒に落ち込んでしまってもしょうがない!! 私は、気丈に振る舞い今までと何も変わらない対応で、テンションで『大丈夫!大丈夫!!』今は癌は治る時代だから。心配ないよー。ゆっくり休みなさいってメッセージだよー。など話しながら母の身体のどこが痛いのが、いつから痛かったのか、その時初めて聞いて、私は更なるショックを受けた。


我慢強い母がずっと不調でいたことも、痛がっていた事も何も知らなかったのです。母が痛いといってるところを優しく触れたら、今までに触れたことがないくらいにガッチガチに硬くなっていた。。。その時に、『私、何のためにセラピストをやってきたのだろうか…。』大切な人のケアも出来ずに何がセラピストなんだ。。。と自分への怒り、情けなさ、後悔…ありとあらゆる感情で渦巻いた。

でも、どんなに後悔してもすでに遅い、どうする事も出来ない。その日から、優先順位を変え、出張もやめて毎日母へ『手あて』に行こうと決めました。仕事が終わり実家に行き、母の手料理をご馳走になり、母へマッサージして帰る。そんな日々を過ごしてくなか、母が痛い。といってるところを触れていくと次の日には痛みがない。と言ってくれる日々が続き、いつの間にかガチガチだった背中やお腹も次第に柔らかくなり、本当に癌なのか??ってくらいに元気でいてくれた。

セラピストになるために、スクールに通って練習してる時は、母の身体を借りて練習してたけど、仕事が忙しくなると、家族の身体のケアがおそろかになっていた、そんなのは本末転倒だ。日々に追われる事で大切なものも見えなくなってしまわないように、母が身をもって教えてくれたんだと思ってます。

母は、癌になるまでは「私は全然幸せじゃない。」と言ってたんです。母の年代の人は、多いんじゃないかと思います。自分の事は後回しにして、家族のため、家族のため。人のために我慢るのが当たり前で、家事も完璧にこなすのが当たり前。ご飯の用意も出来ないのも、母にとっては耐え難いことみたいでした。口では強がっていたけど、人一倍心配性でとてもとても優しい母。

そんな母が、私だけでなく、私の妹や、私の娘が毎日触れてると『あぁ〜ぁー、気持ちよかったぁ〜』と笑顔で喜んでくれるんです。
そして、母の口から『幸せ〜』って言葉が聴けるようになりました。

母の笑顔を見れるのは、本当幸せですよね。
『世の中のお母さんを笑顔にしたい。』

それが、私の一つの夢となりました。私が母との過ごした時間で経験させてもらえたものでした。

そんな大切な母が、2021年に容態が急に悪化して自宅で家族が見守る中、大好きな、大好きな父の手を握りしめたまま、この世を旅立っていきました。

約4年、身体を触れながら母との会話する時間をとれたこと。セラピストをやってて本当に本当に良かったと心から思います。『手あて』とは、触れられる人だけでなく、触れてる方も癒されるんです。

施術受ける人も施術側も、どちらにも幸せホルモンが分泌する。とは学んできたけど、本当に実感出来るものでした。

アイケアセラピスト講座では、
必ずお伝えしていることがあります。

自分を大切に。
自分の大切な人も、大切に。

アイケアのアイは、目のアイだけでなく
LOVEのアイでもあり
I、私のアイの意味を込めてます。

セラピストさんは、本当優しい人が多いんです。
人のために、何かやりたい人。でも自分のやりたいことを我慢して犠牲にしても、元も子もない。身体も心も悲鳴をあげてしまいます。


まずは、自分を大切にして欲しいんです。その後に人のケアの順番になると思っています。

「気持ち良かったと喜んでくれてた
あの声を、あの笑顔を一生忘れない。」

それが、私のセラピストとしての土台となっているもので、日本アイケアセラピスト協会として、私が『手あて』として伝えていきたいことです。

『手から愛を、目から癒しを』

一般社団法人 日本アイケアセラピスト協会®︎
代表理事 江島恵美